2017/6/2 両後肢のナックル整復


泌乳最盛期で両後肢がナックルになってしまったと診療依頼があった。超音波画像診断装置で下腿筋の損傷がないこと及び神経学的検査の結果から両後肢の総腓骨神経麻痺と診断した。

写真1, 2のように処置を行った。2週間後にBOS副木およびギプスを除去予定。治るかどうか楽しみだ。右後肢はその時の様子で治療を検討予定だ。

写真1. 両後肢の重度なナックル姿勢。

写真2. BOS副木にて整復後の左後肢。

2017/5/24 血液中のGlucose, NEFA, BHBAと産後の子宮疾患、繁殖成績、乳量の関係


血液中のGlucose, NEFA, BHBAと産後の子宮疾患、繁殖成績、乳量の関係を検討した論文(10.1016/j.theriogenology.2016.09.036)を読んだ。

・一農家の181頭の牛(108頭の乾乳牛、73頭の初妊牛)を使用。血液は分娩の-50, -6, 3, 7, 14日に採取し、血漿を用いてGlucose, NEFA, BHBAを測定。子宮疾患の指標として、胎盤停滞、子宮炎、膿性腟流出物を調べた。
・初産牛と経産牛の子宮疾患の有無別にGlucose, NEFA, BHBAの推移を評価。
・胎盤停滞の発症牛は健康牛より血糖値が高い傾向にあった(初産牛では-6, 3, 7, 14日、経産牛では-50, 3日で有意差あり)。NEFA, BHBAでは変わらなかった。子宮炎の発症牛は健康牛より血糖値が高い傾向にあった(初産牛では-6, 7日、経産牛では3, 14日で有意差あり)。NEFA, BHBAでは変わらなかった。膿性腟流出物の発症牛は健康牛より血糖値が高い傾向にあった(経産牛のみで3, 7, 14日で有意差あり)。NEFA, BHBAでは変わらなかった。
・7日の血糖値と産後1週目乳量(R = 0.31; P < 0.001)、14日の血糖値と産後2週目乳量(R = 0.27; P = 0.001)には負の相関があった。 ・結論として、負のエネルギーバランスの指標として使われているGlucose, NEFA, BHBAのうちGlucoseのみが子宮疾患と関係があった。 繁殖成績を規定する評価ポイントがどんどん前倒しになってきているナ。胎盤停滞、子宮炎、膿性腟流出物は密接に関係しているので、同じ牛を繰り返し評価した結果になっているのではなかろうか。

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2017/5/18 肉用牛未経産牛における分娩誘起が分娩後の状態に及ぼす影響


肉用牛未経産牛における分娩誘起が分娩後の状態(分娩までの時間、膿性流出粘液、細胞学的子宮内膜炎、卵巣周期の回復、子宮の回復)に及ぼす影響を調べた論文(10.1016/j.theriogenology.2015.12.026)を読んだ。

・81頭の肉用牛の交雑種を使用。胎子はシンメンタールの受精卵移植により受胎。胎齢285日の時点でCON群(無処置)、COR群(Dexamethasone 40mg)、COR+PG群(Corticosteroid 40mg + cloprostenol 500 μg)に分けた。分娩までの時間、分娩難易度5段階、分娩後21および42日時点でのメトリチェックによる膿性流出粘液、サイトブラシによる細胞学的子宮内膜炎、エコーによる卵巣周期の回復および子宮の回復で評価。
・分娩までの時間はCON群で161.9時間、COR群で39.7時間、COR+PG群で32.6時間。COR群とCOR+PG群間に有意差はなし。分娩難易度も群間に有意差なし。死産や胎盤停滞はほとんど発生せず、群間で有意差なし。
・分娩後21日時点での膿性流出粘液はCON 52%, CORT 70%, CORT+PG 52%。分娩後21日時点での細胞学的子宮内膜炎はCON 24%, CORT 48%, CORT+PG 48%。分娩後21日時点での卵巣周期の回復はCON 52%, CORT 59%, CORT+PG 29%。分娩後21日時点での卵巣周期の回復はCON 52%, CORT 59%, CORT+PG 29%。分娩後21日時点での子宮の回復はCON 69%, CORT 48%, CORT+PG 32%。
・結論として、Corticosteroidを利用した分娩誘起は効果的で安全。ただし、PGF2αを併用することで子宮感染の増加、子宮回復の遅れ、卵巣周期回復の遅れがみられる可能性が有る。

分娩誘起の働きがCorticosteroid主体であったことに驚いた。元気な牛にはPGF2αは不要ってことかな。でもDexamethasone 40mgはビックリするぐらいの大容量に感じてしまうけど、このぐらい打たないと本来は効かないのだろうなぁ。

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2017/5/13 急性子宮炎に対する治療として、ケトプロフェンがセフチオフルの代替になるのか


乳牛の分娩後の急性子宮炎に対する治療として、ケトプロフェン(解熱鎮痛消炎剤)がセフチオフル(抗生物質)の代替になるのかを検討した論文(10.3168/jds.2015-10775)を読んだ。

動物用医薬品データベースを見ると、2017年5月時点では牛用のケトプロフェンは発売されていないようだ。

・6農場の610頭のホルスタイン種のデータを使用。188頭が初産、422頭が2産以上。Acute puerperal metritis (APM)の定義は、分娩後10日以内に39.5度以上で赤茶の水様悪露を排出していることとした。APMは診断時にランダムでketoprofen (3 mg/kg of BW)またはceftiofur (1 mg/kg of BW)を3日間投与。3日間の治療でも39.5℃以上の牛は、追加治療を行った(ketoprofen3日またはceftiofur2日)。分娩後21-40日でメトリチェックによる膿性流出粘液(PVD)の5段階評価。追加治療、PVD、その後の乳量、繁殖成績を指標に解析した。

・APMは16.6%(農場により7.2-38.1%の幅)だった。追加治療はketoprofenで3.43倍多かった。平均治療回数はketoprofen(4.83回)はceftiofur(3.63回)より有意に多かった。PVD罹患率に差は見られなかった。その他、初回授精受胎率、乳量、初回授精日数、分娩後200日までの累積受胎率に治療による差は見られなかった。

・結論として、ketoprofenでは治療は多くなるものの、ceftiofurと同等の効果を得た。KetoprofenによるAPMの治療は抗生物質の使用量を減らせる可能性がある。

臨床現場のデータを使っていると、追加治療の効果とか薬剤内容をどう考えるかに頭を悩ますことも多いが、「追加治療」と「診療回数」を指標にすることでこの問題に対応している。面白いなぁ。また、PVDが暖かい季節で増えるデータが載っており、季節性は大いに検討する必要がある。

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2017/5/8 各種の生殖器検査結果とTrueperella pyogenesの検出、受胎性との関係


各種の生殖器検査結果とTrueperella pyogenes(TP)の検出、受胎性との関係を調べた論文(10.1016/j.theriogenology.2015.09.043)を読んだ。またしてTPだ。畜産現場からはつきものの細菌だ。

・一酪農家の452頭のホルスタインを使用。分娩後35日でBCS測定、各種生殖器の検査を行う。Purulent vaginal discharge (PVD)はメトリチェックによるスコア0-3で評価。スコア3をPVD陽性とした。灌流液は20mLの生理食塩水を入れて子宮内容の含まれた液体を回収し0-2で評価。スコア2をpurulent uterine lavage (PUL)陽性とした。回収した灌流液はTPの選択培地で菌の有無を培養。回収した灌流液は細胞学的子宮内膜炎の診断にも使用(5%以上の多核の好中球)。繁殖成績は分娩から受胎までの日数、分娩後300日までの受胎の有無で評価。
・PVD陽性、PUL陽性、細胞学的子宮内膜炎ではTPが有意に多く検出されていた(表1)。生存分析(受胎までの日数)ではTP、PUL、PVDの有無で有意な差を認めた。分娩後300日までの受胎の有無を目的変数として多変量解析するとPVDだけが有意な変数として選択されていた(表2)。PVDと細胞学的子宮内膜炎で相乗的な悪影響が有った。
・結論としてTP陽性の牛では繁殖成績に悪影響があり、これはPVDとPULを増加させている可能性が有る。

得られる情報を上手に使った研究で有ると感心した。TPの検出をターゲットにするのは選択的で取り組みやすいな。

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