2017/4/26 臨床型子宮内膜炎に対するブドウ糖の子宮内注入の効果


臨床型子宮内膜炎に対するブドウ糖の子宮内注入の効果を検討した論文(10.3168/jds.2014-9046)を読んだ。

・分娩後30日でMetricheckを実施し、5段階評価を行った。VDS=3以上を臨床型子宮内膜炎とした。臨床型子宮内膜炎はランダムに無処置とブ50%ドウ糖200mLの子宮内注入を行った。分娩後44日時点でMetricheckにより再評価して治癒率を検討。初回授精受胎率、早期胚死滅率も検討。
・1313頭を調査して175頭の臨床型子宮内膜炎を検出(14.1%)。治癒率は無処置(63.2%)とブドウ糖注入(48.4%)で有意差はなかった(P=0.06)。初回授精受胎率、早期胚死滅率も差はなかった。
・臨床型子宮内膜炎に対するブドウ糖の子宮内注入の効果はないという結論。

家畜診療誌でも同様の検討がなされていたような気もする。そちらの結果はどうだったのだろうか?

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2017/4/23 乳牛における産後のセファピリンの子宮内注入が膿性流出粘液と子宮内膜炎の治療として効果があるのかランダム試験


乳牛における産後のセファピリンの子宮内注入が膿性流出粘液と子宮内膜炎の治療として効果があるのかランダム試験を行った論文(10.3168/jds.2014-9129)を読んだ。

・カナダの28農場の乳牛を分娩後35日で膿性流出粘液と子宮内膜炎の診断を行った。膿性流出粘液はMetricheckの5段階評価。子宮内膜炎は細胞学的診断または白血球エステラーゼによる診断。分娩後35日と49日に血液検査で排卵の有無を検討。分娩後35日でランダムでセファピリンの子宮内注入を実施。その効果を初回授精受胎を指標に重回帰分析を行った。
・産次、排卵、セファピリン注入、膿性流出粘液、子宮内膜炎の項目で有意差が認められた。膿性流出粘液および子宮内膜炎がない牛ではセファピリン注入の有無で受胎率は変わらなかったが、膿性流出粘液陽性(14.5% vs 30.9%)または子宮内膜炎(16.6% vs 25.9%)の牛ではセファピリン注入により受胎率は有意に上昇していた。排卵のあった牛ではセファピリン注入により受胎率は有意に上昇していたが、排卵のなかった牛では受胎率は変わらなかった。
・セファピリン注入は膿性流出粘液と子宮内膜炎に効果があり、排卵の有無がその効果に影響を及ぼしているという結論。

データ数も十分だし、研究デザインも美しい。結論もシンプル。

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2017/4/20 発情の稟告のあった牛に対するMetricheckでの腟内粘液評価の有用性


ここ3週間ほど社内の研究集会を間近に控え、ポスター発表やら抄録の準備に追われていて自分の研究が進まなかった。あとは発表スライドを残すのみで、少し余裕が戻ってきた。

さて、発情の稟告のあった牛に対するMetricheckでの腟内粘液評価の有用性(10.1111/asj.12219)を検討した論文を読んだ。

・平均乳量8900kg、99農家の1348頭のホルスタイン種経産牛を使用。授精師による授精の可否の判断の前に、別の人物がMetricheckで粘液を評価。VDSは5段階だが、従来の方法を若干変更しており、無しの判断が不明瞭。粘度は3段階評価。その他、乳量、分娩後日数を調査。
・授精の可否、授精後90日のノンリターン率(NRR90)を指標に単変量解析のみ。VDSが透明、粘度が糸状、分娩後日数が遅い方がNRR90は高かった。

とても意義深いし、現場の研究で良いのだが、研究としての精度がイマイチ。VDSの評価、解析は多変量で行うとどうなっていただろうか?分娩後日数はBCSと共に多変量解析しないと結果が不明瞭になるのではあるまいか。

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2017/4/9 分娩後の膿性腟粘液排出牛に対する選択的治療


分娩後の膿性腟粘液排出牛に対する選択的治療の効果を検討した論文(10.1016/j.theriogenology.2013.02.002)を読んだ。

・ニュージーランドでは分娩後の”フレッシュチェック”に腟内粘液検査が行われており、陽性牛では卵巣状態に関係なく子宮注入用セファピリンの投与(無選択治療)が行われている。抗生物質の慎重利用のため、黄体の有無による選択的治療でも代替できるのかどうかを検討した。選択的治療では黄体ありでPGF2a投与、黄体なしで子宮注入用セファピリンの投与。
・コマーシャル農場の放牧乳牛15000頭をスクリーニングし、VDS陽性牛のみ研究に使用。スクリーニングは分娩後14日以降、約4週間までが含まれている。VDS評価はメトリチェックの5段階調査。無処置が繁殖成績に悪影響があるのが明白なため、無選択治療群と選択的治療群で検討。
・結果、両群に繁殖成績の違いは認められなかった。抗生物質の慎重利用と経済性からは、黄体の有無による選択的治療を推奨している。

日本においては”フレッシュチェック”は言葉だけしか普及していないように思う。とても現場向きの研究で好印象。Cognosco, Anexa Animal Healthは獣医療の提供をメインであるものの、しっかり研究を行う動物病院なのかな?こういうスタイルに憧れるなぁ。調べてみると、この組織に研究部門があり、この論文の著者が立ち上げたようだ。

僕の会社の研究会(紫葉会)もこのレベルで論文をガンガン出せる状態になれると良いのだが。

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2017/3/31 重度な縦裂蹄


フリーストールで3本肢で歩行している乳用種経産牛がいた。聞くと育成牛の時からずっとそのように歩行していたのですでに諦めていたようだ。しかし、痛がり方を見ていると明らかに蹄病のようだったので、削蹄をさせてもらった。

写真1. 左前肢内蹄の削蹄中に蹄底に認めた縦の亀裂。

写真2. 左前肢内蹄の削蹄中に蹄壁に認めた縦の亀裂。

写真1および2で分かるように重度な縦裂蹄であった。削蹄の本によると、縦裂蹄は肥育牛に多く、亀裂だけで疼痛がないのもいるいそうだ。また、病変に疣が形成されると疼痛が強いそうだ。

今回の症例では内蹄が蹄壁、底面共に縦裂蹄のため左右に割れており疼痛は著しかったが、疣の関与は不明であった。内蹄はできるだけ短く蹄の組織を切除して綿花包帯をし、外蹄にブロックを装着して様子を見ることとした。

写真3. 治療後4日の罹患牛。

写真3のように、治療後4日で見たときには外蹄で負重するようになっていた。